春よ来い
はあやく来い
あるきはじめたみいちゃんが
あかい鼻緒のじょじょはいて
おんもへ出たいと待っている
春よ来い
はあやく来い
おうちの前のももの木の
つぼみもみんなふくらんで
はよ咲きたいと待っている
― 相馬御風 「春よ来い」―
昨夕、春雷。
驟雨地を打ち、飄風窓を揺らす。
本日、朧朧。
東風桜花発き、洗衣半日に乾く。
などと、イキがって漢文もどきを書いてしまうのは、あれからつづけて孟子を読んでいるからで、読んでいるものにすぐに影響されるのは若いころと変わらない。
それはともかく、今日はいいお天気で、気が付いたら、襟巻きもしないでたばこを買いに行っていた。
さて、帰って来てドアを開けると、ヤギコが珍しく玄関先にすわっている。
おお、と思って、しばらく外でドアを開けたまま立っていたら、ヤギコ、外に出てきた。
まあ、今年三度目、一ヶ月ぶりのことである。
彼女、ふらふらと日のあたる階段まで来ると、そこにたまった昨夕の雨で出来た水たまりの水を飲んでおる。
アホウである。
それから、彼女、婆さんくさく、一足づつ階段を下りて、下の地面まで下りた。
これなんぞ、昨年の十月以来のことである。
なんだか、うれしい。
土を踏み、草の匂いを嗅ぎ、昔から好きだった柚子の木の下の昔の流し台の上に寝そべってみせた。
エライなあ!
ヤギコ十七歳。
これが十八回目の春だね。
というわけで、なかなかよい一日だった