午後4時過ぎコーヒー豆を買いに外に出たら、空に鰯雲がひろがっていた。

こんな空をみていると、こんな空をうっとりと眺めること以上に人生の意味なんて、ほんとはなんにもないんだということがよくわかる。

信号を待ちながら、ふと

 

菊ヲ採ル東籬ノ下

悠然トシテ南山ヲ見ル

 

という陶淵明の詩句を思い出す。

ああ、そうか、そういうことだったのか、と思う。

何が「そういうことだった」のかと問われても困るが、陶淵明だってあの詩を

 

此ノ中ニ真意有リ

弁ゼント欲スレドモ已ニ言ヲ忘ル

 

という詩句で終わらせている。

眺めるしかない。

要はそういうことなのだ。

楸邨の句をもじれば

 

鰯雲人に告ぐべきこと忘れ

 

といったところか。