作(な)すことの難きにあらず、よくすることの難きなり。

 

― 「正法眼蔵随聞記」―

 

テレビをつけたら坊さんが

「写経をするときは、その前に手を洗い口を漱いで、それから紙に向かいます」

と言っていた。

そうか!
そうであったか。

はたして、わたしに、手を洗い口をすすいで何かを始めたことがあったろうか。
わざわざそうしてまで、何かに向かおうとしたことがあったろうか。

衣服を正し、威儀をととのえ、そのものに向かう。
そのことが変える何かをしらないわけではなかったが、わたしはそれをやったことがなかった。

 

敗因は布石にあった!

 

たしか、真継伸彦がそんなことを書いていたのを読んだことがある。
けれど、私は布石以前の時点で負けていたのだ。