湯ぶねより一くべたのむ時雨かな

                               川端茅舎

 

夜になって、窓の外に雨の音がする。

山本健吉の歳時記をひらいてみると、「時雨」の項には、茅舎の句、

 

しぐるゝや目鼻もわかず火吹竹

 

が採られていたが、私は冒頭に引用した句の方が好きだ。

なにかこころも冷えた時雨の夜、今は、みずから火を熾すために火吹竹を吹くよりも、私は、むしろ誰かに粗朶の「ひとくべ」でも頼みたいようなこころもちだ。