》昨日は をはつた!《
すべては 不確かに 僕たちを待つ

 

             ― 立原道造  「朝に」 ―

 

 

御覧のように、山田さんが、新しいサイトを作ってくれました。

たぶん、せっかく新しくしたんだから《徒然草》ばかりを書くのはやめなさいということなんでしょう。

ふたたびの新しい始まり、ということで、今日は立原道造の「後期草稿詩篇」から、「朝へ」を引用してみました。

とはいえ、この二行だけ書くと、なにやら安倍政権によって不気味に制定されようとしている労働者派遣法や安保法制が発効した朝の詩のようにもおもえてきますね。

というわけで、全文を載せておきます。
旅立ちの気負いと不安を歌う彼の若さは、もはや私には遠いのですが、ときにこのような若々しい詩を読むのもわるくないことのように思えます。

 

 

 朝に

 

きのふのやうに 僕たちは
たそがれの水路のほとりに
暮れやらない 空のあかりをながめながら
長い嘆きかひに 時をうつしてはならない

陽が見えない空のあたりを
赤く染めながら 今夜が明けようとしてゐる
風は つめたく 身体を打つが 僕たちは
あたらしいものの訪れを感じてゐる

それが何か それがどこからか――
けふ 私たちは岬に立つて
眼あちらの方へ 投げ与へよう
ひろいひろい 水平線のあちらへ

》昨日は をはつた!《
すべては 不確かに 僕たちを待つ

 

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