おほてらの まろきはしらの つきかげを

      つちにふみつつ ものをこそおもへ

 

 

                 会津八一

 

昨夜はほんとうによい月夜であった。
風もないあたたかな秋の夜、雲ひとつない空に十四日の月がかかって、夜の道を歩きながら、ほんとうに気持ちがよかった。

映画館からの帰り、11時を過ぎた街灯がない道に木々の影と自分の影が濃く映る。
立ち止まって、月を見、影を見る。

会津八一の「唐招提寺にて」と前書きされたこの歌を何度も声に出してみる。
いい気持ちだ。

なんとまあ、柄の大きな歌であろう。
あたりを払ってただひとり立っているような歌だ。

声に出せばこころの影までなくなっている。

一時間あまり歩いて、近くの小学校まで来ると、その校庭に立つポプラの樹が、まるでゴッホの絵の中の糸杉みたいだ。
東に向かって歩いている私の目、オリオンがごろりと横になっているのも、なんだかうれしい。

ほんとうによい夜だった。
家の近くのスーパーで半額になった刺身を買って、ひとり、部屋でうま酒を飲んだことであった。

(残念ながら今夜の満月は雲に隠れている)