つまり、生き物のスケッチをする際の要点をひとことでいい表すと、自分なりのウソのつき方を身につけるということになる。
ウソのつき方については、次の三法則がある。
1・ ウソは、はっきりとつく
2・ ウソのつき方をうまくする
3・ ウソはつきとおす
― 盛口満 「生き物の描き方」―
暑い。
冷房をつけて閉め切った部屋はかすかに腐臭がする。
ヤギは今日で四日餌を食べていない。
水も飲まない。
ただ床の上に横たわっているだけだ。
顔を上げると口から垂れたよだれが糸のように長く伸びて前脚を濡らしている。
この四日鳴くこともない。
ただ息をするときの低くくぐもった音がときおり胸から響いてくるだけだ。
今度も大丈夫なのか、どうか、わからない。
この文章、実はウソを書いたんだ、ということになればいいと思う。
けれど、そうはならないような予感がある。
水を飲みに出た台所はサウナのようだ。
むせかえる。
今日はほんとうに暑い。