鶯の初音は今日と我が言へば君は昨日といふぞくやしき

 

                            良寛

 

墓参りに野田山の上まで行って、日盛りの中、墓の周囲の草をむしっていたら、あたりの森から、ツクツクホウシの声が聞こえてきた。
そういえば、その前の日、勝田氏から
「このまえ山に行ったら、もうツクツクホウシの声がしとったわ」
と言われた通りだった。

別に、わたしが、法師蝉の声を仲間内で一番に聞く手柄を取りたかった、というわけではないが、自分もすぐに聞いただけに、ちょっとくやしかった。
というわけで、なんとなく苦笑いしながら、こんな良寛さんの歌を思い出していた。

良寛さん、今日ウグイスの初音を聞いたぜ、と友だちにイバッてみせたのに、
「わしゃ、昨日聞いたし」
などと言われてくやしかったのだろう。
まあ、ひらがなでやわらかく書くほどの「くやしき」で、漢字で書いてみせるほどの悔しさではない。
きっと、仲のいい友達だったのだ。

野田山は標高100メートルくらいだろう。
私の家がある寺町台からはほんの50メートル高いくらいのものだ。
それでも、秋はすでに山に訪れて、台地にはまだ下りて来ないのだ。
帰って来た家の周りにはやっぱりアブラゼミの声がするばかりだった。
(津田沼はミンミンゼミの声ばかり)

ツクツクホウシと言えば、あの原発事故の年、その声を聞いて

ツクツクホウシ、ツクツクホウシ、つくづく放射能イヤ、ツクヅクツクヅク

などという戯れ歌をつくったりしたのだが・・・。

明日は、川内原発が再稼働だそうな。
明日は月こそちがえ、11日だというのに。