毎年おなじことを思う。今年はお盆のころ、そっけない閂の音を

  背後で聞いた。・・・・・名残惜しいものはたくさんあるけれど、女

  の事情に限っていえばノースリーブのワンピースとサンダルである。

 

                平松 洋子  「晩夏に抗う」 より

 

 

かんぬきという字は絵文字みたいですが、本物の漢字でしょうか?

当地の夏もぱたりと終わり長いながい雨期でした。

 

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萩は風が無いのにゆれ、写真にはとても難しい!

 

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おたよりありがとうございました。

萩の花、可憐でございますな。

 

澄みゆく水に 秋萩垂れ
玉なす露は すすきに満つ
思えば似たり 故郷の野辺
あゝ わが同胞(はらから) たれと遊ぶ

などという唱歌を思い出しました。

 

ところで、「閂」という字は、おっしゃられるように、まことに見事な「絵文字」ではございますが、れっきとした漢字でございました。
「峠」とか「畠」とか「榊」とかいった日本人が勝手にこしらえあげた「国字」ではございませんでした。
なんとなれば、漢和辞典に「サン」という音読みが表示されておりましたもの。

漢字といえば、昨日の新聞の一面の見出し

鬼怒川決壊

の大きな文字がおそろしうございました。

「鬼怒る川」という名は如何にも恐ろしうございます。
毛の国(下野〈しもつ毛〉=栃木)から流れてくるので、「毛ぬ川」と常陸風土記には記されているそうですが、それに「鬼怒川」という字を当てたのは、かつてもまたおそろしい氾濫を繰り返す川をだったからなのでしょうか。

その川が「決壊」したのですが、その文字うち、「決」の文字が、偏に「川」もしくは「水」を表す「サンズイ」を持ち、旁に「刃物を手に持つ形=えぐり取る事」を表す「夬」をもっているのは、この字のもともとの意味が
川の堤防を壊す
というものだからです。

もっとも、それは、今回のように自然の猛威によって堤が壊れてしまうことをいうのではなく、洪水の際、田畑人家への氾濫被害を最小限にするために、人があえて堤防の一部を切ってしまうことを指しました。
古来、為政者の為すべきことの第一は治水であり、「決河」こそがその治水の要でした。
しかし、いうまでもなくこの「決河」には重大な「決断」を要しました。
故に「決」の字に「決める」の意味が生じたのだということです。(白川静「字統」)

かつての遊水池にすら住宅が立ち並ぶ現代に「決河」はなかなかできることではありませんが、治水に限らず、あらゆることに、短期的な利益と効率のみ追い求めて、ムダな「遊水地」を持たぬことをよしとする政策は、それが破綻したときの災厄はおそるべきものになります。
その事を、現代の為政者たちは、はたして考えているのでしょうか。

すてぱん