岡崎悠一(三十二歳)は気が狂っている。(中略)。お袋が煙草を買ってきてやると、恩賜の煙草だと云って、感極まったような風で東の方に向かって遙拝(ようはい)の礼をすることがある。道を歩きながら突如として「歩調をとれえ」と気合を込めた号令をかけることがある。――これはみんな、誰も戦争中には、軍人がするのを見慣れているので珍しくないが、今日では、ただふざけているように見えるだけである。この程度のことでは、はた迷惑と云うほどでもない。気違いのすることだから、たいてい「こうち」の人たちも、見て見ぬふりをしている傾向がある。
―井伏鱒二 「遙拝隊長」―
新聞によれば、日曜日のリオデジャネイロ五輪の代表選手団の壮行会で、森喜朗氏が
「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」
と言ったそうな。
まあ、この方が大馬鹿者であることは知ってはいたが、ひどいものである。
ネットの動画で見るとそのひどさが際立つ。
http://www.asahi.com/articles/ASJ735KMZJ73UTIL021.html
はっきり言って聞くに堪えなかった。
彼は2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長であるらしいが、、そもそも、彼にはスポーツ選手に対しての、[リスペクト]とやらいうものがないのであろう。
その一点だけでも、彼には会長を務める資格がないと私には思える。
そろそろ選手の方でも
「日の丸を背負って戦う」
などと気持ち悪いことを真顔で言うのはやめていただきたいのだが・・・。
年寄りの変なおっさんの言葉だと見過ごしていると、今は、スポーツ選手に対してだけ言われている言葉が、やがてすべての国民に向かって言われる日がすぐにやって来るだろう。
「国旗に敬意を表しなさい!」
「国歌をちゃんと歌いなさい!」
もちろんそれは国民に対する[リスペクト]というものをカケラも持たぬ政治家たちによってなされるであろう。
気違いが気違いでなくなる日というのは思いのほかに近いものなのだ。
ところで夕刊によれば、ゴルフの松山選手はオリンピックに出ないのだとか。
実にすばらしい!