映画の始まりには俳優とか題名とかが出てくる。
この映画の題名は
『Night train  to  Lisbon』
これくらいなら私でも分かる。
でも分かるのがいささか災いもした。

 

話はスイスのベルンという街から始まる。
アパートの一室。
本だらけの中、机に向かい書き物をする五十歳ぐらいのおじさん。
朝方、ティーパックから紅茶を淹れる。
(それが最後の一個で、空になった箱をゴミ箱に捨てるのを、映画を見終わったあと私たちは思い出す。)

 

そして雨の中を出勤。
彼の身なりはきちんとしていてカバンと傘をしっかり手にしている。
途中、大きな橋にさしかかった時、彼は橋のまん中辺りに人が欄干に登っているのを発見。
おじさんは懸命に走り、傘は飛んでいきカバンの中身はバラバラに落ち、しかしその人を助ける。
その人は二十歳過ぎの美人で、一緒にバラバラの紙類を拾う。
おじさんは「じゃあ」と言って立ち去ろうとするが、彼女から「一緒にいてもいいですか」と言われてしまう。二人はずぶ濡れになりながら歩く。

 

教室には男女の高校生。
ドア(引き戸)が開きおじさんが入ってくる。
その後から彼女も。
そう、おじさんは先生だったのだ。(哲学らしい)
彼女のコートを脱がし、コート掛けに掛け、脇の方の椅子に座るように促す。
それから先程雨の地面に落ちた紙(答案用紙、採点した物)を生徒たちに配り出す。
すると彼女が静かに立ち出ていく。

 

おじさんはしばし躊躇するが、「自習!」と言い置いて、彼女のコートを持ってあとを追いかける。
が、見失う。
コートのポケットを探ると一冊の本が。
裏には古書店の判子が。
それは幸い先生の行き付けの本屋で、主人に尋ねている時、本から紙切れが落ちる。
主人が言う。
「これはリスボン行きの列車の切符ですな。あと15分で出ます。」
おじさんは走った。
駅のホームで彼女を探す。
ベルが鳴り、列車が動きだす。
そう、ちあきなおみの歌のように扉は開いている。
十中八九、おじさんは乗るだろう、なぜなら私たちはタイトルを知ってしまっているから。
しかし残りの10%は
「おいおい、乗るんかよ、ほんとに?」
と思ってしまう。
この私でさえこの年まで生きているとそれなりに常識というものが身に付いている。
ましてやこの主人公は真面目を絵に描いたような人だ。
乗るか乗らないか、そのスリリングな分岐点が最初のタイトルアップによって想定通りとなってしまう。

 

実は、彼は彼女ではなくその本の中身や作者に強く惹かれての突発行動であったことが少しずつ明らかになる。
彼なりの抱えているものが彼を動かす。
リスボンでは、作者(既に死亡)の家族を訪ねたり、レジスタンス当時の知り合いを訪ねたり。
次第に本の作者の生き様が彼を魅了する。

 

そして最後に彼の生き様も、かもというシーンで終わる。

 

それにしてもヨーロッパってすごいなぁ。
スイスからポルトガルまで列車で行けるんだね。
地図で調べるとベルン~リスボンは4600kmもあることになるのだが、計算間違いかしらん。

 

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おたよりありがとうございます。

なにやら、おもしろそうな映画ですなあ。
見たい!

もっとも、私のパソコン、どういうわけだか、いつのまにかCDを受け付けなくなって、ビデオも見られない。
猫が老いさらばえて以来、あまり長い時間部屋を空けるのがためらわれて、映画館にも行かない。
ダメですな。

ところで、中学校の地図帳には、ヨーロッパの地図のある大西洋上に同緯度の日本地図も描かれている。
それによれば、スイス・ベルンは稚内の少し北あたり、ポルトガル・リスボンは仙台と同緯度にある。
その間の直線距離はほぼ本州縦断ほどでしょうか。
およそ、1000キロ余りと言ったところのようでしたよ。

 

すてぱん