佐山は、上司の命令に唯々諾々と従ったのでした。彼をわらうことはできません。律儀で目をかけられている上司に、自分の供述で迷惑が及ぶことを恐れただけです。課長補佐には、そういう人が多いのです。自殺した人さえあるくらいです。いや、自殺の可能性が犯人の狙いでした。
石田部長は、安田が事件のもみ消しをするから様子を見ているように、とでも言ったのでしょう。

 

― 松本清張  「点と線」―

 

近畿財務局の職員が自殺したそうである。

昭和32年に書かれた「点と線」は少しも古くなっていない。

 

ところで、先日古本屋で見つけて買っってきた

新潮現代文学 「松本清張 〈点と線〉・〈渡された場面〉」

という本を読んでいたら、中から古い切符が出てきた。

たぶん、元の持主が、栞代わりにキセルをした切符をはさんでおいたのであろう。

日付は 54-06-21 とあるから、1979年。
今から40年前の切符には、もちろん、自動改札を通った小さな穴ではなく、ちゃんと駅員が入れたハサミが入っている。
100と運賃が書かれた上には、国鉄線 という文字も読める。

まだ、分割民営化されてはいなかったのだなあ。

それにしても、小説の中で、情死に見せかけて殺された男の名前が「佐山」だったとは・・・・。