ヤギコが枕元で鳴く。
まだ、暗いのに。
三時半だ。
雨はやんだようだ。
虫の声が聞こえている。
眠い。
眠いがヤギコが鳴くので、ドアを開けに布団から出る。
彼女が戻ってくるまで起きている自信がないので、下駄をはさんでドアを開けっ放しにしておく。
ついでに、トイレに立ち、水を飲み、また布団に入る。
虫の声が聞こえている。
昨日の国会と、その周りで、雨の中、声を上げていた人たちの事を思う。
虫の声を聞きながら、そのことを短歌にでもしようかと寝床の中で考えてみる。
けれども、あの人たちの声は、 季節が進み寒くなれば消える虫の声ではないのだと気づいて歌にするのはやめる。
ほんとうの戦いはこれからなのだ・・・。
気が付いたら、眠っていたのだ。
ヤギコが布団の中に入ってくる。
まだ暗い。
けれども、もう虫の声は聞こえない。
かわりに雷の音が聞こえている。
遠く、あるいは近く、雷が鳴りつづけている。
稲光もなければ、雨も降らない。
ただ、雷の音だけが、時折は爆撃の音でもあるかのように地面を揺るがすほどの音を立てて、鳴りつづけている。
こんなに続く雷鳴は、ちょっと聞いたことがない。
不気味なほどに、それは三十分、四十分、・・・・いや、一時間も続いただろうか。
・・・・私はまた眠ってしまった。
ふたたび目が覚めたとき、時計は八時を回っていた。
それでも部屋が薄暗いのは、空を厚い雲がおおっているからだ。
煙草に火を付け、コーヒーを入れる。
新聞を読む。
雷鳴は、まだ遠く聞えている。