シルバーウィークのある夜、ご夫婦と息子さん、娘さんの四人をタクシーにお乗せしました。
今や観光地として有名な近江町から街の中心部に向かうと、右手に二十何回建てのビル(金沢では高層です)が見えて来、

お父さん(私より少し若いくらい)
「ありゃあ、北国(ほっこく)新聞のビルか?北国て最低やの」

「ビルも高いけど、悪名の高さも今だ全国区で認知されてるらしいっすよ」
お父さん
「北国とか森よしろーとか、石川はロクなもんおらんなぁ」

「松井おるやないですか」
お父さん
「松井なぁ。松井と森よしろーと出身地おんなじやしなぁ」

「あと、カルメン・マキ。二水高校出身の。森さんも二水やった。」
お父さん
「カルセール・マキじゃないけ?」
息子
「美川出身で二水やったら浅川マキや」

「ごめんなさい。私間違ってました。浅川マキさん、正解です」
息子
「たしか、カモメとかいう曲、聴いたことあるような」
お父さん
「♪かもめが飛んだー♪って」
お母さん・娘
「違うって!で、なんでカルセール・マキが出てくんのん」
お父さん
「いやぁ、二水といったら、昔の女子高やさかいな。イメージ的にそんな気がしてん。」
お母さん・娘
「カルセール・マキいうたら基本的に男やん。何言うとるんかわからん」

 

とまあ、漫談のようなご家族でした。
しかし、きちんと相手の言葉を聞き、返す。
キャッチボールがしっかりしていたのには感心しました。
世の中には人が喋っている枝葉をすぐに採り折って、枝葉のことについてあれこれ喋って、その自分の話の枝葉について喋り出し、迷宮にさ迷い込む輩もおります。
人の話は途中で手折らずきちんと聞きましょう。
そして相手の胸元へ、受けやすい球を投げましょう。

 

雨音のいつしか去りて虫の聲

 

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おたよりありがとうございます。

気取りのない家族の会話、愉快ですな。
それが、司氏が加わっても変わらないのは、司氏が誰と話すときも鎧を着ていないせいでしょう。

ところで、会話のキャッチボール、

「相手の胸元へ、受けやすい球を投げましょう。」

とありますが、実は司氏、会話のキャッチボール中、時折
≪消える魔球≫
を投げるので有名なのですがねえ。

しかしまあ、時折は≪魔球≫を投げ、それを受けとめたり、はたまた受け取りそこねたりするのも、会話の愉しみというものですな。

それにしても、気がつけば、タイガースは「虫の聲」を通り越して、すでに「虫の息」の領分に入ってしまいましたなあ。

 

秋風や聞えずなりし虎の聲

 

 

すてぱん