月光や遠のく人を銀色に

                星野立子

 

 

忘れてしまったわけではない。
むしろ、いつも思っていたのだ。
けれども、ふと立ち止まり、振り返ってみれば、そのひとはもうあんなにも遠のいてしまっている。

私が歩いてきたのだろうか。
それとも、あの人が立ち去ったのだろうか。
もう、声は届かない。
気がつけば、もうあんなに遠い。

夜、窓から金木犀の匂いが流れてくる。
ラジオが静かなピアノを流している。

明日は仲秋の名月なそうな。