普段、めったに立ち寄らない尾張町から橋場方面に歩いている時、何か気になるガラス戸が右眼の視野にはいりました。振り返ると、あれ!南陽堂ではないですか。さらに店内はきれいに空っぽです。

 

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金沢は町を覆いつくすような大きな災害や戦災がなく、旧家の蔵から持ち込まれたような古い書籍文書類が奥にどっさりあってか、年取った客と店主が暗がりの中でなにやら話している様子を何度も見ました。

 

手前の文学全集や美術全集はそうでなくてはならないように傾き、崩れ、埋もれ、日焼けし、外の明かりを遮り、整理整頓が大好きな私には恐ろしいショーウインドーでした。(その点、文学堂は整然として好対照でした。)

 

平成25年の閉店時に、企画展が夢二館で開催されたようです。以下その紹介文からの引用です。

 

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平成25年、金沢市尾張町の名物古書店であった「南陽堂書店」はその70余年の歴史に幕を下ろしました。先代の店主である故・柳川昇爾(1904-1978)はなみなみならぬ熱意をもって古書店を生業とすると同時に、竹久夢二の熱狂的なファンにして蒐集家でもありました。 古書類を愛した柳川昇爾は、昭和14年頃、金沢の地に店を開き、博識であたたかな人柄によって学生や識者らが篤い信頼を寄せる 相談相手となりました。 本展では、そのような素顔を探りつつ、新収蔵のコレクションを公開することによって、「南陽堂書店」主人が愛した夢二の魅力に迫ります。

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往時の外観が見られないのは残念です。

 

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おたよりありがとうございました。

「南陽堂」は、部屋の乱雑狼藉を恐れぬわたくしにとってさえ実におそろしい古本屋でした。
ほとんど、客の来るのを拒んでいるような・・・・。
橋場町、尾張町は、私の生家からは城の向う側に位置していたせいもあり、何度か店のガラス戸を引いたことはあるのですが、私はかの店で本を購入した記憶はありません。

とはいえ、今、外の光をのみむなしく映すガラス戸しかなくなったかの店の写真をつくつづくと眺めていると、年のせいか、人の世に生を営むことのはかなさを、思ったりいたしました。

 

冬ざるるガラス戸ばかり残りけり

 

すてぱん