原書(テキスト)の明るいメランコリア。
髪かきあげて額に青く芝生の反映(てりかへ)し。
檞(かし)の葉聡(さと)く、図書館裏の影は金色(こんじき)に深み、
(本伏せて俯向(うつむ)く妹の眼に海光の揺れて砕け・・・・・・)
― 吉田一穂 「六月」 ―
高校生はほんとうにまじめだ。
今日も昼過ぎから、串田君とジュリ。
もう三時間も二人だまって勉強している。
(串田君は日本史、ジュリは世界史。)
ノートをとるシャーペンの音と時折紙をめくる音しかしない。
この部屋の中は図書館より静かだ。
試験期間とはいえ、こんなに勉強したことが私にあったろうか。
一日を暑くしていた五月の日も、ようやく少し傾いたようだ。
彼らの勉強はまだまだ続くらしい。