静けさをまなばなければいけない。
聴くことをまなばなければいけない。
よい時間でないなら、人生は何だろう。
― 長田弘 「音楽」―
空き地に行った。
六月のきれいな風が吹いていた。
草はらには、ヘラオオバコのひょろひょろと伸びた茎が風に揺れ、小さな花をつけたニワゼキショウが地面にはりついていた。
小さな木蔭でひらいた詩集のページの上に枝々の葉影が気持ちよく揺れる。
詩集から目を離して、一つの小さな白い雲を見ていたら、雲はそのまま青い空に消えて行った。
雲たちは、みな、ああやって、誰にも気づかれずやすやすと空に消えていくのだ。
だれにも気づかれず空に生れて。
空き地の空をツバメたちが何度も横切っていく。
けれども、私にはあの一羽一羽を識別することはできない。
帰ろうと立ち上がって草はらをすこし行くと、お日さまがあんまりまぶしいので、今日はテントウムシも、ヒメジオンの花の白い日傘の下に休んでいた。