朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに

 

   吉野の里に ふれる白雪

 

      坂上是則

 

 

坂上是則(さかのうえのこれのり)。
坂上田村麻呂の子孫だそうです。

この歌、何にも解説は要りませんね。
旅の夜が明けそめる頃、目を覚ますと、あたりが淡く白くなっている気配がする 。
あれは有明の月の光なのかしら。
見てみると、ここは山ぶかい吉野、それはうっすらと積もった白雪であった。

 

この歌、なんだか、あなたが一年生の頃習った漢詩に似ている。

覚えているかしら、李白の「静夜思」。 その前半二行は、こんなのでした。

 

牀前看月光      牀前(しょうぜん)月光を看る
疑是地上霜      疑うらくは是れ地上の霜かと

 

 

漢詩は、寒夜、外の白さに、霜が降りたのかと思ったら、実は月光だったと歌っていますが、是則さんの歌の方は、逆に、有明の月の光かと思ったら、それは白雪だったと歌っていますね。

どちらも、しーんとした美しさです。

有明の 月にはあらで み吉野に

     あけぼの告げる あわい白雪