しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
平兼盛
平兼盛(たいらのかねもり)。
名前は似ているけれど、平清盛とは関係がない。
平清盛は「桓武平氏」、この人は光孝天皇から出ている「平氏」。
肩書がないから、もちろん身分は低い。
歌は、前の歌に続いて「忍ぶ恋」の歌ですね。
これは、そういう題を出されて歌を詠んだ「題詠(だいえい)」です。
歌の競い合いである「歌合(うたあわせ)」の席で、次に出てくる壬生忠見(みぶのただみ)の歌と競い合った歌です。
歌を見ていきましょう。
ちょっと、引っかかりそうなのは「色」でしょうか。
顔色、表情、そぶり、態度、など、外に現れたようすですね。
「ものや思ふと」は「『恋に悩んでいるのか』と」ですね。
《や》は疑問の係助詞、《思ふ》は、だから、連体形です。
で、歌の意味はむずかしくない。
隠して隠して、隠し通したつもりでいたけれども、あの人に対する私の思いは外に見えてしまっていたのですね。
「誰かに恋をしてるのですか」 と人に尋ねられるほどに。
まあ、バレちゃいますね、若い人の恋は。
すぐにわかる。
見え見え。
私みたいに、人の恋路にほとんど興味を持たない男にもわかっちゃう。
まあ、若くなくても、恋に悩めば、わかっちゃうものなのかもしれませんが・・・。
隠してる つもりだったが ばれてたよ
恋してるのと 人に聞かれた