やがてヤギコの口が開いて一回大きく呼吸をした。それがヤギコが動いた最後だった。

 

― 小林朋道 「なぜヤギは、車好きなのか?」―

 

本屋で、セイタカアワダチソウのあいだからとぼけた顔の山羊が顔をつき出している写真が表紙になった本を手にとった。

 

 

なにげなく目次を見ると、大きな活字で

第一話  大学に誕生した「ヤギ部」と初代ヤギ「ヤギコ」のこと

とある。

「えっ!」
と思って見ていくと終りの二つの章は

ヤギコが思っていること

ヤギコの死

という章題である。
買わないわけにはいかない。

本の内容は、2001年に開学した鳥取環境大学という大学にある「ヤギ部」の活動の話である。

「ヤギ部」というのは、学部名ではなく部活サークルの名前である。
ヤギを飼って世話をする、という部活である。
大学ができた時、著者が初めての講義で、

「緑の中に、のどかにヤギが草を食んでいる姿、いいだろーなー。
みなさんで、大学のキャンパスでヤギを飼ってみてはどうですか」

などと言ってみたら、学生たちが、

「ヤギ、飼ってみたいです」

といいはじめて出来た部活である。
そのときはまだヤギは大学にはいなかった。

そこで、著者がつてを頼ってもらってきた子ヤギが「ヤギコ」というわけだ。
名前は学生たちが決めたそうだ。
ヤギの「ヤギコ」は2001年生まれだというから、うちのヤギコの方が一つお姉さんだ。

そのヤギの「ヤギコ」は2012年2月の寒い日に死んだそうだ。
ちょっと泣いた。

ネコの「ヤギコ」もかわいいが、ヤギの「ヤギコ」もとてももかわいい。