あらゆるはげしい情熱のうちで、女に一ばんふさわしいものと言ったら、それこそ恋である。

 

― ラ・ロシュフコオ 「箴言と考察」(内藤濯 訳)―

 

金曜日の夕方、小学校のリサ先生がやってきて、

「せんせ、読みます?」

と、『ベルサイユのばら』全十巻を置いて行った。

まあ、こんな機会でもなければ、読むこともあるまいと土曜日に4時間ほどかけて読んだが、ちょいと疲れた。
たとえてみれば、甘いお菓子ばかりを食べ続けているような感じで、一巻読み終わるごとにお茶が飲みたくなる,といった感じだった。

この物語、オスカルという主人公の名前は聞き知っていたが、それが実は女人であることは知らなかった。

読み終わった後、ベルサイユなら、こいつか、と、フランス革命の100年ほど前、ルイ13世・14世の時代フランス宮廷に生きたラ・ロシュフコオ公爵の箴言を読みかえしてみた。
思わず笑ってしまう警句もあったが、子どもの頃はずいぶん鋭い人だなあ思った言葉も、この年になれば、そのおおよそはおもしろくもないものであった。

そんな彼の箴言の中で、引用した言葉がはたして正鵠を射ているものなのかどうかは知らない。
ただ、少女漫画というものの多くは、
「女の子に最もふさわしい情熱は、やっぱり恋よねっ!」
というモットーのもとに書かれているものなのかなあ、などと思ったりしたが、そもそもが少女漫画をよく知らないんだから何も言えない。

「今度来たときに感想きかせてね」

リサ先生は言ってたんだけど、登場する人物たちに一向共感を覚えないようでは、私、やっぱり少女漫画には向いていませんのですな。