母居りし部屋の窓下あはれあはれふたもと赤きチューリップ咲く

 

 

あどけなく風に頷くすずらんのうなじの稚なし母のなき庭

 

 

列車の中で塚本邦雄の本を読んでいたせいか、久しぶりに短歌なんぞ作ってみたが、われながら、その芸のなさに呆れる。

とはいえ、母の死後十年、母のいつも起居していた部屋の窓の下に思いがけず小さい赤いチューリップの花が二輪咲いているのを目にしたとき、なにやらそれが姉とわたしのような気がして、心が衝かれ目が遠くなった。

とまあ、このようなきわめて個人的な思いをあらためて書かねばならぬほどひどい短歌ということなのだが。