夢ならで夢なることを歎きつつ春のはかなきもの思ふかな
藤原義孝
今朝の新聞によれば、イタリアの映画監督エルマンノ・オルミ氏が亡くなったそうだ。
小さな記事だったが、思わず目がとまってしまった。
今から40年前、日比谷の映画館で見た「木靴の樹」はすごい映画だった。
ゆうに 三時間を超える映画を観終わって映画館を出たとき、わたしはことばをどこから見つけてくればいいのかわからなかった。。
たぶんこれが私の中でのベスト1の映画なのだ。
それから10年たって観に行った「聖なる酔っぱらいの伝説」も忘れられない。
浮浪者である主人公が大事に持っていて、酒を飲むとき、時折開く古びたブリキの箱の味わい深さ!
新聞の記事を読んで、震災の時、壁からはがれ、そのまま埃をかぶっていたその映画のポスターを今日はひさしぶりに部屋に飾ってみた。
(これは当時の女子高生が二人して、わたしのために映画館からはがして来てくれたものだ。)
30年間煙草の煙に燻されて、黄変した紙が、すでに凱風舎の La Legenda である。
昨日に続き、今日も五月とは思えぬ寒さゆえ、今夜のひまわり荘の bevitore は、ポスターを眺めながら、水炊きを肴に、熱燗。
《グラスの中で愛しい人々に出会う。》
ポスターにはこんな惹句が書いてある。
私の「ブリキの箱」の中にも大事な何かが入っているのだろうが、銚子二本ではまだまだその鍵は開かないらしい。