かくとだに えやはいぶきの さしもぐ.
君がため 惜しからざりし 命さへ .
みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ.
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ .
八重葎(やへむぐら) しげれる宿の .
由良(ゆら)の門(と)を 渡る舟人(.
あはれとも いふべき人は 思ほえで .
逢ふことの たえてしなくば なかなか.
逢ひ見ての 後の心に くらぶれば .
契(ちぎ)りきな かたみに袖を しぼ.